事例
最近ご質問いただいた内容です。
視覚障害で障害年金1級を「永久認定」で、何十年も受給しているという高齢者からのご相談でした。
新しい手術で視力が回復するかもしれないと医師に言われたものの、視力が回復したら障害年金が不支給になるか心配になったとのことでした。
回答
障害の程度が障害厚生年金3級「未満」の場合
障害厚生年金3級未満となった場合は、国民年法施行規則第33条の7により、「障害不該当届」を速やかに、日本年金機構(年金事務所)に提出する義務があります。
障害基礎年金の受給権者は、厚生年金保険法施行令(昭和二十九年政令第百十号)第三条の八に定める障害の状態に該当しなくなつたときは、速やかに、次に掲げる事項を記載した届書を機構に提出しなければならない。
国民年金法第33条の7
障害の程度が障害厚生年金3級「以上」の場合
額改定請求は、そもそも障害の程度が「増進」(悪化)したため、障害年金の額を増額してほしいという請求ですので、障害が軽減した場合については対応しません。
名称も「障害給付 額改定請求書 障害給付を受ける原因となった障害の程度が重くなったときの届 障害給付を受けられるようになった以後の疾病または負傷により障害の程度が重くなったときの届」です。
また、そもそも額改定請求は「任意」ですので、提出する義務もありません。
厚生労働大臣は、障害基礎年金の受給権者について、その障害の程度を診査し、その程度が従前の障害等級以外の障害等級に該当すると認めるときは、障害基礎年金の額を改定することができる。
2 障害基礎年金の受給権者は、厚生労働大臣に対し、障害の程度が増進したことによる障害基礎年金の額の改定を請求することができる。
3 前項の請求は、障害基礎年金の受給権者の障害の程度が増進したことが明らかである場合として厚生労働省令で定める場合を除き、当該障害基礎年金の受給権を取得した日又は第一項の規定による厚生労働大臣の診査を受けた日から起算して一年を経過した日後でなければ行うことができない。
4 障害基礎年金の受給権者であつて、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病(当該障害基礎年金の支給事由となつた障害に係る傷病の初診日後に初診日があるものに限る。以下この項及び第三十六条第二項ただし書において同じ。)に係る当該初診日において第三十条第一項各号のいずれかに該当したものが、当該傷病により障害(障害等級に該当しない程度のものに限る。以下この項及び第三十六条第二項ただし書において「その他障害」という。)の状態にあり、かつ、当該傷病に係る障害認定日以後六十五歳に達する日の前日までの間において、当該障害基礎年金の支給事由となつた障害とその他障害(その他障害が二以上ある場合は、すべてのその他障害を併合した障害)とを併合した障害の程度が当該障害基礎年金の支給事由となつた障害の程度より増進したときは、その者は、厚生労働大臣に対し、その期間内に当該障害基礎年金の額の改定を請求することができる。
5 第三十条第一項ただし書の規定は、前項の場合に準用する。
6 第一項の規定により障害基礎年金の額が改定されたときは、改定後の額による障害基礎年金の支給は、改定が行われた日の属する月の翌月から始めるものとする。国民年金法第34条
障害等級が障害基礎年金2級未満となった場合の支給停止についても規定(国民年金法第36条第2項)自体はあるのですが、自ら進んで悪化したことを届け出る必要については、施行規則においても記載されていません。
障害基礎年金は、その受給権者が当該傷病による障害について、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)の規定による障害補償を受けることができるときは、六年間、その支給を停止する。
2 障害基礎年金は、受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなつたときは、その障害の状態に該当しない間、その支給を停止する。ただし、その支給を停止された障害基礎年金の受給権者が疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病に係る初診日において第三十条第一項各号のいずれかに該当した場合であつて、当該傷病によりその他障害の状態にあり、かつ、当該傷病に係る障害認定日以後六十五歳に達する日の前日までの間において、当該障害基礎年金の支給事由となつた障害とその他障害(その他障害が二以上ある場合は、すべてのその他障害を併合した障害)とを併合した障害の程度が障害等級に該当するに至つたときは、この限りでない。
3 第三十条第一項ただし書の規定は、前項ただし書の場合に準用する。国民年金法第36条
小括
障害の程度が軽減された場合は、障害年金については下記のようになります。
- 障害厚生年金3級以上の場合:
- 届出不要
- 永久認定の場合:現状維持
- 有期認定の場合:更新時に下位等級になる可能性あり
- 障害厚生年金3級未満の場合:
- 「障害不該当届」の提出が義務
- 障害年金が支給停止
- 65歳到達または3年経過の遅い方に該当すると障害年金の受給権が消滅
そもそも、障害年金における永久認定は、回復不可能な障害に対して認められるものですので、永久認定の方の障害が軽減される可能性は極めて低いものと思われます。
ただ、今回のように、数十年にわたる医学の進歩により、永久認定の方でも障害が軽減され、障害不該当届を提出する義務がある可能性もあるのだと知りました。
補足
障害厚生年金3級14号との関係
さて、さらにややこしくなります。
障害手当金相当でも治らない(症状固定していない)場合は、障害厚生年金3級14号が受給できます。
つまり、手術等で回復したものの障害手当金相当の状態が残った場合は、いつ「障害不該当届」を提出するのかという問題が出てくるのです。
個人的には、術後の経過により主治医が医師が治った(症状固定)と判断したタイミングで「障害不該当届」を提出することになると考えます。
再度悪化した場合は支給停止事由消滅届を提出
「障害不該当届」を提出後、再度障害の程度が増進した場合や、65歳までに他の障害になり合わせて障害等級に該当するようになった場合は、「支給停止事由消滅届」を提出することにより、再度障害基礎年金を受給できるようになる場合があります。
ただし、下記の場合には障害基礎年金の受給権が消滅しているので、障害基礎年金を再度受給することはできません。
障害基礎年金の受給権は、第三十一条第二項の規定によつて消滅するほか、受給権者が次の各号のいずれかに該当するに至つたときは、消滅する。
一 死亡したとき。
二 厚生年金保険法第四十七条第二項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にない者が、六十五歳に達したとき。ただし、六十五歳に達した日において、同項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなつた日から起算して同項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態に該当することなく三年を経過していないときを除く。
三 厚生年金保険法第四十七条第二項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなつた日から起算して同項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態に該当することなく三年を経過したとき。ただし、三年を経過した日において、当該受給権者が六十五歳未満であるときを除く。国民年金法第35条
おぎ社労士事務所でも支給停止事由消滅届の対応は可能です。
詳細はお問い合わせください。
総括
視力障害の「障害不該当届」を提出するタイミング
- 治った場合:
- 両眼が0.1以下から片眼が0.2以上に回復した時
- 治らない場合:(次のいずれか)
- 両眼が0.6以下から片眼が0.7以上に回復した時
- 見えにくい方の片眼が0.1以下から0.2以上に回復した時
ただ、このWebページはあくまで障害年金だけの話です。
障害者手帳の話とは異なりますので、お住いの自治体の障害者手帳の担当の方にご相談ください。





