傷病手当金は、病気やけがで働けなくなった方の所得補償として健康保険法や国民健康保険法等で定められています。
自営業者等が対象の国民健康保険法は「任意給付」となっており、実施していない自治体がほとんどですが、会社員等が対象の健康保険法においては「法定給付」となっており、要件を満たす場合は必ず給付を受けることができます。
そんな傷病手当金ですが、健康保険法と国家公務員共済組合法で少し規定が異なっています。
| 健康保険法 | 国家公務員共済組合法 |
|---|---|
| (傷病手当金) 第九十九条 被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。 | (傷病手当金) 第六十六条 組合員(第百二十六条の五第二項に規定する任意継続組合員を除く。第五項、次条第一項及び第三項並びに第六十八条から第六十八条の五までにおいて同じ。)が公務によらないで病気にかかり、又は負傷し、療養のため引き続き勤務に服することができない場合には、勤務に服することができなくなつた日以後三日を経過した日から、その後における勤務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。 |
| 2 傷病手当金の額は、一日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した十二月間の各月の標準報酬月額(被保険者が現に属する保険者等により定められたものに限る。以下この項において同じ。)を平均した額の三十分の一に相当する額(その額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)の三分の二に相当する金額(その金額に、五十銭未満の端数があるときは、これを切り捨て、五十銭以上一円未満の端数があるときは、これを一円に切り上げるものとする。)とする。ただし、同日の属する月以前の直近の継続した期間において標準報酬月額が定められている月が十二月に満たない場合にあっては、次の各号に掲げる額のうちいずれか少ない額の三分の二に相当する金額(その金額に、五十銭未満の端数があるときは、これを切り捨て、五十銭以上一円未満の端数があるときは、これを一円に切り上げるものとする。)とする。 (以下省略) | 2 傷病手当金の額は、一日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した十二月間の各月の標準報酬の月額(組合員が現に属する組合により定められたものに限る。以下この項において同じ。)の平均額の二十二分の一に相当する金額(当該金額に五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)の三分の二に相当する金額(当該金額に五十銭未満の端数があるときは、これを切り捨て、五十銭以上一円未満の端数があるときは、これを一円に切り上げるものとする。)とする。ただし、同日の属する月以前の直近の継続した期間において標準報酬の月額が定められている月が十二月に満たない場合にあつては、次の各号に掲げる金額のうちいずれか少ない額の三分の二に相当する金額(当該金額に五十銭未満の端数があるときは、これを切り捨て、五十銭以上一円未満の端数があるときは、これを一円に切り上げるものとする。)とする。 (以下省略) |
| 3 前項に規定するもののほか、傷病手当金の額の算定に関して必要な事項は、厚生労働省令で定める。 | 3 前項に規定するもののほか、傷病手当金の額の算定に関して必要な事項は、財務省令で定める。 |
| 4 傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から通算して一年六月間とする。 | 4 傷病手当金の支給期間は、同一の病気又は負傷及びこれらにより生じた病気(以下「傷病」という。)については、第一項に規定する勤務に服することができなくなつた日以後三日を経過した日(同日において第六十九条第一項の規定により傷病手当金の全部を支給しないときは、その支給を始めた日)から通算して一年六月間(結核性の病気については、三年間)とする。 (以下省略) |
上記のみを見ると、会社員は標準報酬月額の平均額の30分の1、公務員は標準報酬月額の平均額の22分の1なので、公務員の方が支給額が多いように見えます。
しかし、国家公務員共済組合法第66条第1項における「勤務に服することができない期間」を都合の良いように解釈して「勤務を要しない日(週休日など)については、支給されません」とする共済組合も見られます。
それ自体が違法性を帯びる可能性が高いと解釈できますが、認められたとしても、国家公務員の傷病手当金が土日の日数分減らされるので、1か月分で考慮すると国家公務員の傷病手当金の方が少なくなるという問題が発生するのです。
例1(標準報酬月額の平均額が30万円、1か月の暦日が31日、勤務すべき日数が21日の場合)
会社員:
300,000×1/30=10,000円
10,000円×2/3≒6,667円
6,667円×31日分=206,677円(支給額)
国家公務員:
300,000×1/22≒13,640円
13,640円×2/3≒9,093円
9,093円×21日分=190,953円(支給額)
差額:
206,677円-190,953円=15,724円国家公務員の方が少ない
例2(標準報酬月額の平均額が30万円、1か月の暦日が28日、勤務すべき日数が20日の場合)
会社員:
300,000×1/30=10,000円
10,000円×2/3≒6,667円
6,667円×28日分=186,676円(支給額)
国家公務員:
300,000×1/22≒13,640円
13,640円×2/3≒9,093円
9,093円×20日分=181,860円(支給額)
差額:
186,676円-181,860円=4,816円国家公務員の方が少ない
さらに言えば、週3日×1日7時間勤務の短時間国家公務員であれば、もともと少ない給料であるのに、勤務日が週に3日しかないため、土日の2日だけでなくさらに2日分も減らされてしまう可能性があり生活保護水準にさえ達しない可能性が出てきます。
私は、このような「勤務に服することができない期間」を都合の良いように解釈して「勤務を要しない日(週休日など)については、支給されません」とすることは、所得補償としての目的を逸脱し違法であると考えます。
そもそも、国家公務員共済組合法第66条第3項に「前項に規定するもののほか、傷病手当金の額の算定に関して必要な事項は、財務省令で定める。」としているため、財務省令(国家公務員共済組合法施行規則)以外の共済組合の規則等で「勤務に服することができない期間(勤務を要しない日を除く)」などと変更することはできません。
もちろん、土日分を減らしたのであれば、その分は日数としては通算されず、傷病手当金の受給期間が延びるという制度設計であればまだ分からないでもありませんが、そのあたりが適切に運用されているか検証する必要があるものと思います。
令和4年10月より非常勤職員も共済組合員の対象になり、短時間勤務の国家公務員共済組合の組合員が増えてきたなかで、傷病手当金の支給日から「勤務を要しない日を除く」という運用を続けることは、時代遅れとしか言いようがありません。
(もっと言えば、支給開始日から1年6か月分の日数を計算して、具体的に何日分支給すべきなのかは人により異なるので、そのあたりも適切に運用されているか検証する必要があるものと思います。)
国家公務員共済組合法が、「30分の1」ではなく「22分の1」と規定したのは、期末・勤勉手当(賞与)分を福利厚生として勘案しようという意図だと考えられます。
もし、国家公務員の方が傷病手当金を受けた時に、土日分の金額が除かれていた場合は、審査請求等をすべきであると思料します。
当事務所は、障害年金専門の社労士事務所です。国家公務員共済組合法については、社会保険労務士が対応できる法律として社会保険労務士法に定められていませんので、審査請求のご依頼は承れません。予めご了承ください。



