道路交通法における身体障害者補助犬について

前回、道路交通法における白杖の義務についてお伝えしました。

今回は、身体障害者補助犬について深掘りしていこうと思います。

身体障害者補助犬とは

身体障害者補助犬は、身体障害者補助犬法という法律に、以下のように規定されています。

補助犬種別対応障害根拠法令実働頭数
(R8年4月)
盲導犬視覚障害道路交通法第14条第1項
道路交通法施行令第8条第2項
身体障害者補助犬法第16条第1項
744頭
介助犬肢体不自由身体障害者補助犬法第16条第1項54頭
聴導犬聴覚障害身体障害者補助犬法第16条第1項51頭

目が見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む。以下同じ。)は、道路を通行するときは、政令で定めるつえを携え、又は政令で定める盲導犬を連れていなければならない。

道路交通法第14条第1項

法第十四条第一項の政令で定める盲導犬は、盲導犬の訓練を目的とする一般社団法人若しくは一般財団法人又は社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第三十一条第一項の規定により設立された社会福祉法人で国家公安委員会が指定したものが盲導犬として必要な訓練をした犬又は盲導犬として必要な訓練を受けていると認めた犬で、内閣府令で定める白色又は黄色の用具を付けたものとする。

道路交通法施行令第8条第2項

指定法人は、身体障害者補助犬とするために育成された犬(当該指定法人が訓練事業者として自ら育成した犬を含む。)であって当該指定法人に申請があったものについて、身体障害者がこれを同伴して不特定かつ多数の者が利用する施設等を利用する場合において他人に迷惑を及ぼさないことその他適切な行動をとる能力を有すると認める場合には、その旨の認定を行わなければならない。

身体障害者補助犬法第16条第1項

盲導犬と政令で定める用具を付けた犬の違いとは?

道路交通法第14条第1項は、白杖または盲導犬の義務となっています。

目が見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む。以下同じ。)は、道路を通行するときは、政令で定めるつえを携え、又は政令で定める盲導犬を連れていなければならない。

道路交通法第14条第1項

一方、目が見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む)に該当しない程度の障害者の場合については、一定の障害事由に該当した場合に限り、政令で定める用具を付けた犬を連れて道路を通行できる規定になっています。

目が見えない者以外の者(耳が聞こえない者及び政令で定める程度の身体の障害のある者を除く。)は、政令で定めるつえを携え、又は政令で定める用具を付けた犬を連れて道路を通行してはならない。

道路交通法第14条第2項

ここで重要なのは、「盲導犬」ではなく、「政令で定める用具を付けた犬」と定められていることです。
この政令で定める用具とは、道路交通法施行令第8条第5項及び同法において次のように定められています。

(目が見えない者等の保護)
第八条 法第十四条第一項及び第二項の政令で定めるつえは、白色又は黄色のつえとする。
2 法第十四条第一項の政令で定める盲導犬は、盲導犬の訓練を目的とする一般社団法人若しくは一般財団法人又は社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第三十一条第一項の規定により設立された社会福祉法人で国家公安委員会が指定したものが盲導犬として必要な訓練をした犬又は盲導犬として必要な訓練を受けていると認めた犬で、内閣府令で定める白色又は黄色の用具を付けたものとする。
3 前項の指定の手続その他の同項の指定に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。
4 法第十四条第二項の政令で定める程度の身体の障害は、道路の通行に著しい支障がある程度の肢体不自由、視覚障害、聴覚障害及び平衡機能障害とする。
5 法第十四条第二項の政令で定める用具は、第二項に規定する用具又は形状及び色彩がこれに類似する用具とする。

道路交通法施行令第8条

(盲導犬の用具)
第五条の二 令第八条第二項の内閣府令で定める用具は、白色又は黄色の別図の形状のものとする。

道路交通法施行規則第5条の2

つまり、「目が見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む)」及び「耳が聞こえない者及び政令で定める程度の身体の障害のある者」のみが、犬に白色か黄色の「U字型ハーネス」又は備考1に基づく「バーハンドル型ハーネス」をつけた道路の通行が認められているのです。

例えば、ハーネスの形状は似ているが黒色のハーネスを使用している場合、道路交通法的に目が見えない者(目が見えない者に準ずる者)である場合は違法ですが、耳が聞こえない者及び政令で定める程度(道路の通行に著しい支障がある程度)の身体障害者である場合は許容されると解釈することもできます。

政令で定める用具を付けた犬を連れて歩く白杖・盲導犬の義務のない障害者は法的に安全なのか?

なぜ、「盲導犬」と「政令で定める用具を付けた犬」を分けているのか気になったので、他の条文も調べてみたところ以下のような違いがありました。

(運転者の遵守事項)
第七十一条 車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
二 身体障害者用の車が通行しているとき、目が見えない者が第十四条第一項の規定に基づく政令で定めるつえを携え、若しくは同項の規定に基づく政令で定める盲導犬を連れて通行しているとき、耳が聞こえない者若しくは同条第二項の規定に基づく政令で定める程度の身体の障害のある者が同項の規定に基づく政令で定めるつえを携えて通行しているとき、又は監護者が付き添わない児童若しくは幼児が歩行しているときは、一時停止し、又は徐行して、その通行又は歩行を妨げないようにすること。

二の二 前号に掲げるもののほか、高齢の歩行者、身体の障害のある歩行者その他の歩行者でその通行に支障のあるものが通行しているときは、一時停止し、又は徐行して、その通行を妨げないようにすること。

道路交通法第71条

つまり、白杖・盲導犬が義務ではなく任意に使用できる障害者については、白杖を使用している場合は、第二号の「歩行を妨げないようにすること」という遵守義務があるのですが、「政令で定める用具を付けた犬」は適用されず第二号の二に該当すると解釈できる規定になっているのです。

さらに謎なのは、道路交通法上「通行」と「歩行」の違いが必ずしも明確ではないことです。誰か教えてください…。

道路交通法第71条第2号と同条第2号の2の違いとして「歩行」の有無だけではなく、罰則の有無という違いもあります。

第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三月以下の拘禁刑又は五万円以下の罰金に処する。
十五 第七十一条(運転者の遵守事項)第二号、第二号の三又は第三号の規定に違反した者

道路交通法第119条第15号

こんな法改正あったらいいなぁ~

たまにタグ付けしている「こんな法改正あったらいいなぁ~シリーズ」ですが、真正面から書くのは久しぶりかもしれません。

道路交通法第14条第2項及び同法第71条第2号を以下のように改正し、同法施行令第8条第5号を削除すべきものと思料します。

条文番号個人的な案現行
第14条
第2項
目が見えない者以外の者(耳が聞こえない者及び政令で定める程度の身体の障害のある者を除く。)は、政令で定めるつえを携え、又は身体障害者補助犬法(平成十四年法律第四十九号)第二条に規定する盲導犬、介助犬又は聴導犬を連れて道路を通行してはならない。目が見えない者以外の者(耳が聞こえない者及び政令で定める程度の身体の障害のある者を除く。)は、政令で定めるつえを携え、又は政令で定める用具を付けた犬を連れて道路を通行してはならない。
第71条
第2号
身体障害者用の車が通行しているとき、目が見えない者が第十四条第一項の規定に基づく政令で定めるつえを携え、若しくは同項の規定に基づく政令で定める盲導犬を連れて通行しているとき、耳が聞こえない者若しくは同条第二項の規定に基づく政令で定める程度の身体の障害のある者が同項の規定に基づく政令で定めるつえを携え、若しくは同項の規定に基づく盲導犬、介助犬又は聴導犬を連れて通行しているとき、又は監護者が付き添わない児童若しくは幼児が歩行しているときは、一時停止し、又は徐行して、その通行又は歩行を妨げないようにすること。身体障害者用の車が通行しているとき、目が見えない者が第十四条第一項の規定に基づく政令で定めるつえを携え、若しくは同項の規定に基づく政令で定める盲導犬を連れて通行しているとき、耳が聞こえない者若しくは同条第二項の規定に基づく政令で定める程度の身体の障害のある者が同項の規定に基づく政令で定めるつえを携えて通行しているとき、又は監護者が付き添わない児童若しくは幼児が歩行しているときは、一時停止し、又は徐行して、その通行又は歩行を妨げないようにすること。

以上のようにすれば、目が見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む)の盲導犬のみではなく、政令で定める程度の身体障害者の盲導犬、介助犬又は聴導犬を連れている歩行者にも配慮が行き届くようになるものと思われます。

正直なところ、目が見えない者に準ずる者の連れる盲導犬と、政令で定める程度(道路の通行に著しい支障がある程度)の視覚障害者の連れる盲導犬の違いを一見して分かるはずもなく、どうやって第71条第2号が適用されるか明らかではないことからも、以上のような法改正がされるべきであると考えます。

トップで示した前回の白杖の部分でも、法改正があったらいいなぁ~という部分がありますので、あわせて読んでいただけると幸いです。