日雇特例被保険者の定義
次の3つの要件を全て満たす者は、健康保険の日雇特例被保険者となります。
- ①日々雇用される者、②2月以内の雇用期間で更新見込みのない者、③4月以内の季節的業務に使用される者、④6月以内の臨時的事業の事業所に使用される者のいずれかに該当する者(日数要件)
- 適用事業所に使用される者(事業所要件)
- 後期高齢者医療保険に加入していていない者又は適用除外の承認を受けた者(除外要件)
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
日数要件
健康保険法第3条第8項において、次のように定義されています。
この法律において「日雇労働者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
一 臨時に使用される者であって、次に掲げるもの(同一の事業所において、イに掲げる者にあっては一月を超え、ロに掲げる者にあってはロに掲げる定めた期間を超え、引き続き使用されるに至った場合(所在地の一定しない事業所において引き続き使用されるに至った場合を除く。)を除く。)
イ 日々雇い入れられる者
ロ 二月以内の期間を定めて使用される者であって、当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないもの
二 季節的業務に使用される者(継続して四月を超えて使用されるべき場合を除く。)
三 臨時的事業の事業所に使用される者(継続して六月を超えて使用されるべき場合を除く。)
- 日々雇い入れられる者が、1月を超えて同一の事業主に雇用された場合は、一般被保険者となります。
- 2月以内の雇用期間で更新の見込みがない者が、雇用期間が更新されることとなった場合は、一般被保険者となります。
- 所在地の一定しない事業所の例としては、各地を巡業するサーカス団や演劇団などが挙げられます。
なお、2月以内の雇用期間で更新見込みのある者は、初日から一般被保険者となります。
2月以内の雇用期間であれば、更新見込み無しは日雇特例被保険者、更新見込み有りは一般被保険者(短時間労働等で要件を満たさない場合を除く)に該当することになりますのでご留意ください。
事業所要件
簡単に言えば、その事業所で健康保険に加入している人がいれば適用事業所となります。
一定の業種で5人未満の場合、健康保険が任意加入となっている事業所があります。この場合、事業所が任意加入していれば、従業員全員が加入することになるので、日雇特例被保険者となることができます。一方、事業所が任意加入していなければ、他の従業員と同様に健康保険の被保険者(日雇特例被保険者)になることはできません。
除外要件
健康保険法第3条第2項において、次のように定められています。
この法律において「日雇特例被保険者」とは、適用事業所に使用される日雇労働者をいう。ただし、後期高齢者医療の被保険者等である者又は次の各号のいずれかに該当する者として厚生労働大臣の承認を受けたものは、この限りでない。
ここでの後期高齢者医療の被保険者等の「等」とは、後期高齢者医療の被保険者になるべき者が、生活保護を受けている場合等となっています。そのため、75歳(後期高齢者医療に加入できる一定の障害があれば65歳)以上の者は自動的に適用除外となります。
一方で、それ以外の理由では、厚生労働大臣(年金事務所)の承認が必要になります。承認であるため、厚生労働大臣(年金事務所)が許可、不許可を決めることができる権限を持っており、承認しない(不許可)とした場合は、適用除外となることはできないので日雇特例被保険者となります。
日雇特例被保険者は原則適用です。除外になりたいのであれば、承認申請書を提出し承認される必要があります。
適用除外となるためには
適用除外の対象者
健康保険法第3条第2項の続きは、次のように定められています。
一 適用事業所において、引き続く二月間に通算して二十六日以上使用される見込みのないことが明らかであるとき。
二 任意継続被保険者であるとき。
三 その他特別の理由があるとき。
そのため、連続する2月間(1月と2月などの歴月単位)に通算して26日未満(25日以内)の労働となることが明らかである場合や、以前の健康保険に加入してから2年間だけなることができる任意継続被保険者である場合は、「適用除外承認申請書」を提出して承認されれば適用除外となることができます。
この「その他特別の理由があるとき」については、次のような理由が適用除外承認申請書の事由に挙げられています。
- 国民健康保険の被保険者で、他に本業を有するものが臨時的に日々使用されるため。
- 昼間学生で休暇期間中にアルバイトとして短期間使用されるため。
- 他の社会保険の被扶養者であり家事専従者であるが、余暇を利用して短期間日々使用されるため。
- その他
これらに該当する場合には、その事実を証明する書類(昼間学生なら学生証等)を添付する必要がありますので、適用除外承認申請書を提出する時に忘れないようにしましょう。
適用除外承認申請書の提出方法
健康保険法施行規則第113条は、次のように定められています。
日雇労働者は、法第三条第二項ただし書の規定による承認を受けようとするときは、次に掲げる事項を記載した申請書を厚生労働大臣に提出しなければならない。
一 氏名及び生年月日
二 住所又は居所
三 適用除外の理由
四 適用除外の期間
五 日雇特例被保険者手帳を所持しているときは、その記号及び番号
2 前項の場合において、同項第三号の理由の基礎となる事実を証明する書類があるときは、これを同項の申請書に添付しなければならない。
提出先は、住所地・居住地を管轄する年金事務所となります。
郵送等でも対応できるのかは、管轄の年金事務所にお問い合わせください。
パソコンが使える方は、e-Govから申請することができますが、電子証明書が必要になります。
電子証明書には、公的個人認証サービス(JPKI)を無料で利用することができますので、マイナンバーカードの読み取りと署名用電子証明書(暗証番号が英数字6~16文字のもの)を利用した手続きも可能です。詳しくは、下記のサイトをご参考ください。
日雇特例被保険者の加入手続き
日雇特例被保険者手帳交付申請書の提出
日雇特例被保険者となったときは、健康保険法第126条第1項の規定により、日雇特例被保険者となった日から起算して5日以内に、健康保険法施行規則第114条第1項に定める次に掲げる事項を記載した申請書を年金事務所又は指定市町村に提出しなければならないこととなっています。
一 日雇特例被保険者の氏名、生年月日及び性別
二 日雇特例被保険者の住所(居所で申請を行うときは、住所及び居所)
三 初めて日雇特例被保険者となった年月日
四 雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第四十四条の規定により交付を受けた日雇労働被保険者手帳の交付番号及びその交付を受けた公共職業安定所の名称
五 申請の日前の二年間に住所を変更したことがある日雇特例被保険者にあっては、現住所に転入した年月日並びにその転入前の住所及び当該住所を有していた期間
六 使用されている事業所(申請の日において使用されている事業所がないときは、最後に使用されていた事業所)の名称及び所在地並びに当該事業所で初めて使用された年月日
このため、日雇特例保険者かつ日雇労働被保険者となる者(日々雇い入れられる者または30日以内の期間を定めて雇用される者)は、先に公共職業安定所(ハローワーク)で手続きし、その後年金事務所または指定市町村で手続きをする流れになります。
なお、日雇特例被保険者手帳交付申請書は、適用除外承認申請書と同じく、e-Govで手続きができます。
指定市町村とは、日雇特例被保険者手帳交付等といった一部の健康保険事務を行う指定された自治体のことです。指定市町村の一覧については、公表されていないようですので、居住地の自治体までご確認いただければと思います。
なお、適用除外承認申請書は、指定市町村で受付できませんので、年金事務所にて手続きすることとなります。
機構保存本人確認情報の提供を受けることができない方の場合は、住民票の写しが必要書類となります。
被扶養者届の提出
被扶養者がある場合は、年金事務所や指定市町村での申請書の提出と同時に「被扶養者届」を提出します。
被扶養者届の内容は、健康保険の一般被保険者と同じ内容であり、「職業、収入、住所、氏名、性別、生年月日、個人番号(個人番号を有する者に限る。)及び被保険者との続柄」などを記入する必要があります。
あらかじめ、被扶養者の個人番号や収入要件を満たしているかなどを確認しておきましょう。
日雇特例被保険者が途中で被扶養者を有するに至った時(結婚して配偶者が被扶養者になる場合やこどもが生まれた場合等)も、一般被保険者と同じように被扶養者を有するに至った時から5日以内に手続きをする必要があります。
日雇特例被保険者手帳
日雇特例被保険者手帳交付申請書を提出した場合、「日雇特例保険者手帳」が交付されます。
40歳以上になると介護保険第2号被保険者として、介護保険料も必要になりますので、日雇特例被保険者手帳の様式が変わります。40歳になったら直ちに年金事務所または指定市町村まで手帳交換の申請に行きましょう。
なお、日雇労働被保険者手帳と違い、顔写真は不要です。
医療機関への受診時
日雇特例被保険者が医療機関に受診する際は、マイナ保険証や資格確認書の代わりに、特別療養費受給票または受給資格者票を提出することで、医療費が3割負担となります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
特別療養費受給票
対象者
健康保険法第145条第1項の規定により、次に該当する場合は、特別療養費受給票が取得できます。
次の各号のいずれかに該当する日雇特例被保険者でその該当するに至った日の属する月の初日から起算して三月(月の初日に該当するに至った者については、二月。第五項において同じ。)を経過しないもの又はその被扶養者が、特別療養費受給票を第六十三条第三項第一号若しくは第二号に掲げる病院若しくは診療所若しくは薬局のうち自己の選定するものに提出して、そのものから療養を受けたとき、又は特別療養費受給票を指定訪問看護事業者のうち自己の選定するものに提出して、そのものから指定訪問看護を受けたときは、日雇特例被保険者に対し、その療養又は指定訪問看護に要した費用について、特別療養費を支給する。ただし、当該疾病又は負傷につき、療養の給付若しくは入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、家族療養費若しくは家族訪問看護療養費の支給又は介護保険法の規定による居宅介護サービス費の支給、特例居宅介護サービス費の支給、地域密着型介護サービス費の支給、特例地域密着型介護サービス費の支給、施設介護サービス費の支給、特例施設介護サービス費の支給、介護予防サービス費の支給若しくは特例介護予防サービス費の支給を受けることができるときは、この限りでない。
一 初めて日雇特例被保険者手帳の交付を受けた者
二 一月間若しくは継続する二月間に通算して二十六日分以上又は継続する三月ないし六月間に通算して七十八日分以上の保険料が納付されるに至った月において日雇特例被保険者手帳に健康保険印紙をはり付けるべき余白がなくなり、又はその月の翌月中に第百二十六条第三項の規定により日雇特例被保険者手帳を返納した後、初めて日雇特例被保険者手帳の交付を受けた者
三 前に交付を受けた日雇特例被保険者手帳(前に二回以上にわたり日雇特例被保険者手帳の交付を受けたことがある場合においては、最後に交付を受けた日雇特例被保険者手帳)に健康保険印紙をはり付けるべき余白がなくなった日又は第百二十六条第三項の規定によりその日雇特例被保険者手帳を返納した日から起算して一年以上を経過した後に日雇特例被保険者手帳の交付を受けた者
つまり、①初めて日雇特例被保険者になった時、②日雇特例被保険者手帳に健康保険印紙が貼れなくなり交換した時、③日雇特例被保険者以外となり日雇特例被保険者手帳を返納した時から1年経過後に再び日雇特例被保険者となった時に特別療養費受給票が取得できます。
③の例としては、毎年4月~5月の2か月間、茶葉の収穫で日雇特例被保険者になっている者が、初めて日雇特例被保険者となった年は、特別療養費受給票を取得することができるのに対し、翌年は、日雇特例被保険者手帳を返納した日から起算して1年未満となるので、特別療養費受給票を取得できないことになります。
その際は、受給資格票で必要な前2月に26日または前6月に78日分の健康保険印紙がないため、日雇特例被保険者として医療機関に受診することが困難になるため、適用除外承認申請書を提出して別の医療保険制度で対応することになるかと思います。
3年目は、日雇特例保険者手帳を返納した日から1年以上が経過しているため、③の規定により特別療養費受給票を取得することができます。
期間
特別療養費の支給期間は、日雇特例被保険者手帳の交付を受けた日の属する月の初日から起算して3か月(月の初日に交付を受けた者は2か月)になります。
例えば、4月5日に日雇特例被保険者手帳の交付を受けた者は6月30日まで、4月1日に日雇特例被保険者手帳の交付を受けた者は5月31日までとなります。
申請方法
健康保険法施行規則第130条により次のように定められています。
日雇特例被保険者は、特別療養費受給票の交付を申請しようとするときは、協会又は委託市町村に日雇特例被保険者手帳を提出しなければならない。
そのため、委託市町村(指定市町村)以外にお住まいの方は、協会(全国健康保険協会)に申請する必要があるのですが、申請書について全国健康保険協会で公開されていませんので、各都道府県の支部にお問い合わせください。
受給資格者票の発行
対象者
要件は、日雇特例被保険者が下記の日数分以上の保険料を納付していることです。
- 当該日(受診日)の属する月の前2月間に通算して26日分
- 当該日(受診日)の属する月の前6月間に通算して78日分
留意点としては、日雇特例被保険者本人が健康保険印紙の枚数要件をクリアしていないと、被扶養者も療養費(医療費の7割分)が支給されないことです。枚数要件をクリアできないことが明らかな場合は、適用除外承認申請書により承認を受けるなどして、無保険状態にならないように注意しましょう。
申請方法
協会(全国健康保険協会)もしくは委託市町村(指定市町村)に「受給資格者票」を発行してもらう必要があります。特別療養費受給票と同じく、申請書について全国健康保険協会で公開されていませんので、各都道府県の支部にお問い合わせください。
日雇労働したときは…
日雇特例被保険者は、使用される日ごとに日雇特例被保険者手帳を事業主に提出して「健康保険印紙を貼付・消印」してもらうことで、日雇特例被保険者の保険料を納付したことになります。
雇用保険の日雇労働被保険者手帳は、使用される日ごとに提出する義務はありましたが、雇用保険印紙を貼付・消印してもらうのは、賃金受取日となっていたところが異なる点です。
日雇特例被保険者に関する罰則
日雇特例被保険者を雇用する事業主に対する罰則は、健康保険法第208条により下記のとおり定められています。
事業主が、正当な理由がなくて次の各号のいずれかに該当するときは、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
(中略)
四 第百六十九条第二項の規定に違反して、保険料を納付せず、又は第百七十一条第一項の規定に違反して、帳簿を備え付けず、若しくは同項若しくは同条第二項の規定に違反して、報告せず、若しくは虚偽の報告をしたとき。
日雇特例被保険者本人に対する罰則は、健康保険法第212条により下記のように定められています。
第百二十六条第一項(日雇特例被保険者手帳)の規定に違反して、申請をせず、又は第百六十九条第四項(適用事業所に使用される日ごとに、その日雇特例被保険者手帳を事業主に提出する義務)の規定に違反して、日雇特例被保険者手帳を提出しなかった者は、三十万円以下の罰金に処する。
おわりに
最後に念のために書きます。
日雇特例被保険者について、該当者の手続きは義務です。
26日未満の雇用契約だからといって、日雇労働者が適用除外承認申請書を出さずに日雇特例被保険者に加入していない場合は、違法であり30万円以下の罰金が科されます。
事業所も同様に、労働者の雇用期間が26日未満だからといっても、適用除外承認申請書を提出し承認を得たことを確認していなければ、健康保険印紙による保険料の納付が義務となります。労働者よりも重く拘禁刑が科される場合もありますので、必ず確認するようにしてください。
スポットワークが普及している中で、一般被保険者に該当せず、日雇特例被保険者に該当する労働者は、潜在的に増加傾向にあるものと思われます。
スポットワークする日雇労働者の方は、健康保険印紙を貼付・消印できる事業所(健康保険に加入している適用事業所)なのかを十分に確認して、雇用契約を結ぶことが重要だと考えます。
おぎ社労士事務所は、障害年金専門の社労士事務所ですが、当事務所の理念「少数者の権利をまもる」により、障害年金以外の情報発信もしております。
日雇特例被保険者に関する質問等は、管轄の年金事務所までお願いいたします。



