はじめに
日雇労働者といっても、法律によりその定義は異なります。
ここでは、雇用保険法及び健康保険法に関する日雇労働者の手続きについてみていきます。
雇用保険法における手続き
対象者については、下記の内容をご参照ください。
日雇労働被保険者は、事業主が適用区域にある場合だけではなく、事業主が除外区域であっても日雇労働者が適用区域に居住している場合も対象となりますので、事業主が適用区域・除外区域であるかを問わず、日雇労働者被保険者に対する対応をすることが義務付けられています。
日雇労働被保険者に対する雇用保険料は、以下の2種類になります。
- 一般保険料
- 印紙保険料
一般保険料については、他の労働者と同様の手続きであるため、ここでは省略させていただきます。
印紙保険料を納付するには、下記の手順が必要となります。
事前準備
雇用保険印紙購入通帳の取得
雇用保険印紙を購入するには、雇用保険印紙購入通帳が必要になります。
印紙保険料納付計器なる物もありますが、現役の物はほぼないと思います…。
気になる方は以下の記事からどうぞ。
労働保険徴収法施行規則第42条は、下記のとおり定められています。
事業主は、雇用保険印紙を購入しようとするときは、あらかじめ、次に掲げる事項を記載した申請書を所轄公共職業安定所長に提出して、雇用保険印紙購入通帳(様式第一号)の交付を受けなければならない。
一 労働保険番号
二 事業主の氏名又は名称及び住所又は所在地
三 事業の名称、事業の行われる場所及び事業の種類
そのため、事業主が雇用保険印紙購入通帳を持っていないから、印紙保険料を払わないという論理はまかり通りません。
事業主は、印紙保険料の半額を負担する義務を負いますので、払わなければ労働保険料未納となり、国税滞納処分として差し押さえの可能性があります。
必ず交付を受けましょう。
消印に使用する認印の登録
管轄公共職業安定所(ハローワーク)で雇用保険印紙購入通帳を作成する際に、消印に使用する認印の登録をしましょう。
認印の要件等は、特に無いようです。
雇用保険印紙の購入
雇用保険印紙は、郵便局(郵便窓口・ゆうゆう窓口)でのみ購入することができます。
支払方法は、現金のみとなりますのでご注意ください。
日雇労働日当日~賃金支払い
日雇労働日には、日雇労働被保険者に対して、日雇労働被保険者手帳を提出するよう求める必要があります。
賃金支払い日には、日雇労働被保険者手帳の提出に加えて、雇用保険印紙を貼付・消印することで印紙保険料を納付することになります。
貼り付けするのは、日雇労働被保険者を使用した日(労働日)の貼付欄に貼り付けることとなります。
日雇労働被保険者が、同日に別の事業所で労働して既に印紙が貼られている場合は、その印紙の上に消印がわかるようにしてずらして貼付・消印することになります。
また、港湾運送業の荷役など、昼夜兼行かつ過重な肉体労働である場合は、算定方法の特例がありますので、詳しくは業務取扱要領をご確認ください。
報告
労働保険徴収法施行規則第54条は、次のように定められています。
雇用保険印紙購入通帳の交付を受けている事業主は、次に掲げる事項を記載した報告書によつて、毎月における雇用保険印紙の受払状況を翌月末日までに、所轄都道府県労働局歳入徴収官に報告しなければならない。
一 労働保険番号
二 事業主の氏名又は名称及び住所又は所在地
三 報告年月日
四 当該事業主の事業に使用する日雇労働被保険者に関する事項
五 雇用保険印紙の受払状況
このため、毎月、都道府県労働局の歳入徴収官(役職名)に報告する義務があります。
翌年以後
雇用保険印紙購入通帳の更新
雇用保険印紙購入通帳の有効期限は、1保険年度(4月1日~3月31日)です。
そのため、毎年3月1日から3月31日までの間に更新する必要があります。
健康保険法における手続き
対象者については、下記の内容をご参照ください。
健康保険法の場合は、適用除外承認申請書を提出して承認を得た日雇労働者と、それ以外の日雇労働者で対応を分ける必要があります。
承認を得たことが不明なまま保険料を支払わない場合は、未払いとなりますので、年金事務所から調査を受けたときに証拠書類として提出できるよう、適用除外の承認を受けた旨の書面のコピーを保存しておくことが実務上求められるでしょう。
日雇特例被保険者の健康保険の場合は、印紙保険料のみの支払いとなり、一般保険料は不要ですので天引きしすぎないように留意してください。
事前準備
健康保険印紙購入通帳の取得
健康保険法施行規則第145条は、次のように定められています。
適用事業所の事業主であって日雇労働者を使用する者は、次に掲げる事項を記載した申請書を厚生労働大臣に提出して、様式第十八号の健康保険印紙購入通帳の交付を受けなければならない。ただし、既に健康保険印紙購入通帳の交付を受け、これに余白があるときは、この限りでない。
一 事業所整理記号(健康保険組合が管掌する健康保険の事業主にあっては、被保険者等記号)
二 事業所の名称及び所在地
三 事業の種類
四 健康保険組合(法第百七十九条に規定する国民健康保険の保険者を含む。)を設立する事業主にあっては、当該健康保険組合の名称、所在地及び保険者番号
こちらも、雇用保険法と同じく、義務として購入手帳の交付を受ける必要があります。
ただし、留意していただきたいのは、「日雇労働者を使用する者は」と定められている点です。
たとえ、全ての日雇労働者が日雇特例被保険者適用除外承認申請書により承認を受けた者であったとしても、日雇特例被保険者にはなりませんが、日雇労働者であることに変わりはありません。
そのため、「日雇労働者」を使用する適用事業所の事業主は、日雇特例被保険者に係る健康保険印紙による保険料を納付する義務がなくても、健康保険印紙購入通帳の交付を受けるべきです。
消印に使用する認印の登録
健康保険法施行規則第147条は、次のように定められています。
事業主は、法第百六十九条第三項の規定により消印する場合に使用する印章の印影を、あらかじめ、厚生労働大臣に届け出なければならない。印章を変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の印章は、事業所の名称及びその電話番号を明らかにするものでなければならない。
3 法第百六十九条第三項の規定による消印は、印影が明瞭に読み取ることができるよう行わなければならない。
まず、第1項において、健康保険印紙購入通帳の交付を受ける時など、事前に年金事務所で印章を届ける必要があります。
そして、第2項が雇用保険法と異なる点で、「事業所の名称」+「事業所の電話番号」が印章に彫られている必要があることです。
あまり大きい住所付きのゴム印等は、日雇特例被保険者手帳に押せるサイズにならないと思いますので、新たに作成される場合は、どのくらいの大きさまで許容されるのか年金事務所に確認された方がよろしいかと思います。
第3項は、きれいに消印を押しなさいという注意義務規定になります。
健康保険印紙の購入
健康保険印紙の購入は、雇用保険印紙と同様で、郵便局(郵便窓口・ゆうゆう窓口)でのみ購入することができます。
支払方法も、現金のみとなりますのでご注意ください。
留意していただきたいのは、雇用保険印紙が賃金日額に応じて3段階だったのが、健康保険印紙は、11段階になるというところです。
時間給で残業してもらった場合や体調不良で早退してもらった場合は、予想していた健康保険印紙が使用できなくなる可能性がありますので、他の等級の健康保険印紙も予備として保管しておく必要が出てくると思います。
また、健康保険印紙は、一般保険料と同じように毎年4月ごろに印紙保険料額が変更されていますので、保険者である全国健康保険協会のWEBページ等をご確認ください。
印紙保険料額は、全国一律の基準となっています。一般保険料のように都道府県ごとに保険料が異なることはありません。
日雇労働日~賃金支払い
日雇労働日には、日雇特例被保険者に対して、日雇特例被保険者手帳を提出するよう求める必要があり、かつ、その日のうちに健康保険印紙を貼る必要があります。
健康保険法第169条は、下記のとおり定められています。
日雇特例被保険者は前条第一項第一号イの額の二分の一に相当する額として政令で定めるところにより算定した額及び同項第二号の額の二分の一の額の合算額を負担し、日雇特例被保険者を使用する事業主は当該算定した額、同項第一号ロの額に相当する額として政令で定めるところにより算定した額及び同項第二号の額の二分の一の額の合算額を負担する。
2 事業主(日雇特例被保険者が一日において二以上の事業所に使用される場合においては、初めにその者を使用する事業主。第四項から第六項まで、次条第一項及び第二項並びに第百七十一条において同じ。)は、日雇特例被保険者を使用する日ごとに、その者及び自己の負担すべきその日の標準賃金日額に係る保険料を納付する義務を負う。
3 前項の規定による保険料の納付は、日雇特例被保険者が提出する日雇特例被保険者手帳に健康保険印紙をはり、これに消印して行わなければならない。
4 日雇特例被保険者手帳を所持する日雇特例被保険者は、適用事業所に使用される日ごとに、その日雇特例被保険者手帳を事業主に提出しなければならない。
5 事業主は、日雇特例被保険者を使用する日ごとに、日雇特例被保険者にその所持する日雇特例被保険者手帳の提出を求めなければならない。
6 事業主は、第二項の規定により保険料を納付したときは、日雇特例被保険者の負担すべき保険料額に相当する額をその者に支払う賃金から控除することができる。この場合においては、事業主は、その旨を日雇特例被保険者に告げなければならない。
7 事業主は、日雇特例被保険者に対して賞与を支払った日の属する月の翌月末日までに、その者及び自己の負担すべきその日の賞与額に係る保険料を納付する義務を負う。
8 第百六十四条第二項及び第三項並びに第百六十六条の規定は前項の規定による保険料の納付について、第百六十七条第二項及び第三項の規定は日雇特例被保険者に対して通貨をもって賞与を支払う場合について準用する。
雇用保険に出てこなかった賞与についてですが、この計算方法も健康保険法第168条第1項第2号において定められています。
賞与額(その額に千円未満の端数がある場合には、これを切り捨てるものとし、その額が四十万円(第百二十四条第二項の規定による標準賃金日額の等級区分の改定が行われたときは、政令で定める額。以下この号において同じ。)を超える場合には、四十万円とする。)に平均保険料率と介護保険料率とを合算した率(介護保険第二号被保険者である日雇特例被保険者以外の日雇特例被保険者については、平均保険料率)を乗じて得た額
平均保険料率と介護保険料率については、全国健康保険協会が発表する印紙保険料額の変更のWEBページの中で記載されていますので、毎年ご確認ください。
報告
健康保険法施行規則第149条第1項及び第2項は、次のように定められています。
法第百七十一条第一項の報告は、毎月における健康保険印紙の受払及び法第百七十条第一項に規定する告知に係る保険料の納付の状況を記載した様式第十九号の健康保険印紙受払等報告書を、翌月末日までに機構に提出して行うものとする。
2 法第百七十一条第二項の報告は、翌月末日までに行うものとする。
そのため、毎月、日本年金機構に対して報告する必要があります。
その他
雇用保険印紙及び健康保険印紙を使用しなくなった場合、買戻しをすることができます。
それぞれ公共職業安定所(ハローワーク)や年金事務所の確認を受けることで、郵便局の窓口(郵便窓口・ゆうゆう窓口)にて買い戻すことになります。
印紙が保険料額の変更等で変更された場合は、公共職業安定所(ハローワーク)や年金事務所の確認は不要となりますが、雇用保険印紙のみ買戻し期間が変更日から6か月と定められていますので、ご注意いただけたらと思います。
おわりに
関連法令を改めて読み込んでいく中で感じたのは、日雇労働者関係の規定は義務規定ばかりということです。
日雇労働者を雇い入れる可能性のある事業主の方は、「雇用保険料・社会保険料は支払う」というコンプライアンス意識の向上に努めていただければと思います。
おぎ社労士事務所は、障害年金専門の社労士事務所ですが、当事務所の理念「少数者の権利をまもる」により、障害年金以外の情報発信もしております。
日雇労働被保険者(雇用保険)に関する質問等は、管轄の公共職業安定所(ハローワーク)まで、日雇特例被保険者(健康保険法)に関する質問等は、管轄の年金事務所までお願いいたします。





