以前ブログでお伝えしたように、的場ら(2023)の研究では、2019年度には新たに16,504人の視覚障害者に障害者手帳が交付されています。

一方で、日本年金機構の障害年金業務統計における眼の診断書を用いて新規裁定が行われた件数は、年2,900人程度で推移しています。
視覚障害による身体障害者手帳の新規交付者は約16,000人いるのに、なぜ障害年金の新規裁定だと約2,900人まで減ってしまうのか考えてみたいと思います。
初診日要件を満たすこと
的場らの調査では、新たに認定された視覚障害者の年齢層は80~89歳(29.6%)が最も多く、次いで70~79歳(28.2%)、60~69歳(15.3%)で、視覚障害者の89.7%は50歳以上と指摘しています。
また、厚生労働省の「令和4年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」(以下、厚労省の調査)では、全国の障害者について調査しており、その中で18歳以上65歳未満の視覚障害による身体障害者手帳を取得しているのは7万4千人とし、全体の27万3千人の約27%にとどまることを明らかにしています。
そのため、視覚障害で身体障害者手帳を取得する人の多くは高齢者なのです。
障害年金には、初診日要件という、障害に関して初めて病院に受診した日(初診日)に国民年金・厚生年金保険に加入していたかという要件があります。
60歳以上で老齢年金を受給している場合は、障害年金が受給できなくなるので、的場らの調査からみると60歳から89歳までの約73.1%を16,504人から除いてみると、4,439人となります。
厚労省の調査から推計しても、初診日要件を満たす者は約4,000人であると考えられます。
保険料納付要件を満たすこと
厚生労働省は、令和7年6月27日に令和6年度の国民年金の加入・保険料納付状況を公表し、「厚生年金保険被保険者(第1号厚生年金被保険者の収納率は98.9%)、国民年金第3号被保険者等も含めた公的年金加入対象者全体でみると、未納者は約1%」と発表しています。
ただ、障害年金の保険料納付要件は、以下のように定められているため、すべての方が保険料納付要件を満たすとは限りません。
- 初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
- 初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
現年度納付率で考えると、令和6年度分国民年金保険料の納付率「78.56%」であるため、2割程度は障害年金を受給できない人がいてもおかしくないことになります。
約4,000人から2割を引いて、保険料納付要件を満たす者を推計すると約3,200人となります。
障害要件を満たすこと
つまり、毎年3,200人程度が障害年金を受給できる状態になり、そのうち2,900人程度が障害年金を請求しているということになります。
視覚障害により身体障害者手帳を所持している方の多くが、障害年金の請求を忘れることなく申請できている人がほとんどであることが明らかとなりましたが、1割程度は障害年金の請求を忘れているのではないかという状況とも言えます。
ただ、視覚障害による身体障害者手帳6級は、「視力の良い方の眼の視力が0.3以上0.6以下かつ他方の眼の視力が0.02以下のもの」とされていますが、この状態は障害手当金相当であるため、初診日が国民年金であった者は受給することができません。
そのため、その1割すら解消されている可能性があります。
まとめ
以上より、身体障害者手帳を取得している方は、障害年金も受給できる障害状態になれば、請求している可能性が高いといえます。
課題は、身体障害者手帳を取得していない視覚障害者が、障害年金を請求できる環境を整えることです。
実は、身体障害者手帳の診断書を記載できる医師は、自治体に認められた指定医師のみです。そのため、かかりつけの病院で指定医師がいないという場合もあり、身体障害者手帳を取得していないという場合も考えられます。
「自分は身体障害者手帳を取得していないから、障害年金は受給できない」と思いこまずに、一度ご相談ください。
「もしかしたら…」で構いません。
同じ障害者目線で、一緒に考えます。
参考文献
的場ら(2023)「A nationwide survey of newly certified visually impaired individuals in Japan for the fiscal year 2019: impact of the revision of criteria for visual impairment certification」Japanese Journal of Ophthalmology 67 (3), 346-352頁




